ちょっと生きづらさを抱えた人へ、気持ちを楽にするためのお手紙です。

女泣川ものがたり 都筑道夫

わたしが大好きな小説です。
作者の都筑道夫も、わたしが最も好きな作家です。
元々は『べらぼう村正』『続 べらぼう村正』の2冊で、
『女泣川ものがたり』としてまとめられた、時代小説です。
時代小説と言うと、人情物か、捕り物帳ですが、
この『女泣川ものがたり』は、頼りにならない親、ばくち打ちの亭主などを持った女たちが、
家族を養うために身を売る長屋で、用心棒を務める左文字小弥太を軸とした、
ハードボイルドです。

いまの世のなか、身分も学問もない女が、男に負けないほどに稼ぐには、ものもちの妾になるか、悪場所に身を沈めるか、隠し売女になるしかない。好きでもない男に縛られるのも、蒔絵の籠の鳥になるのも、いやだというなら、おしまいの道を選ぶしかないんだ。だが、それも男の食い物にされやすい。文字通りの地獄さ。

人間は地獄に落ちなければ、ならないこともある。からだを売って、女が生きていくのも、地獄だろう。この地獄には、ふつう女衒や女郎屋のあるじ、やりて婆や妓夫といった鬼がいる。地獄で生きなければ、ならないのなら、鬼のいない地獄は作れないものか。お関はそう考えて、実行しているのだ。

センセー(別の小説の登場人物にちなみ、ファンは都筑道夫をセンセーと呼びます)は、
ホラー、ミステリー、SF、ポルノ、時代小説と、幅広く書ける作家でした。
売春の話ですし、艶っぽいシーンもあるので、人によっては拒絶感を持つかもしれませんが、
おんなの悲しみ、哀しいけれども、じめじめした感じではなくて、
明るく振る舞い乗り切っていく女たちの姿が描かれています。
女性の心の機微を、男性であるセンセーが、よくぞここまで表現したなあって思います。
謎解きあり、立ち回りあり、お色気あり、涙ありなのに、すべてがまとまっています。
センセーは技巧ばかりを褒められるのはあまり納得いっていなかったようだけど、
書き方が本当に上手です。
読んでもらうとわかるのだけど、特に最終話なんて秀逸。

わたしとしては、センセーの最高傑作だと思います。
興味があれば、ぜひ、読んで欲しい小説です。

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