反地球シリーズの作者であるジョン・ノーマンは、
アメリカの哲学の大学教授だそうで、
作中に哲学的思想が出てきます。
人間とは何か。
人間とはどうあるべきか。
人間の尊厳とは。
死とどう向き合うべきか。
特に3巻目「ゴルの神官王」では、人間を下等な生き物とみなし、
道具に使いあっさりと殺してしまう神官王の言動と、
主人公で、地球人としての感性を持つタール・キャボットとの対比により、
かなり哲学的な内容で、その思想は難解です。
物語は簡単だけれど、結構考えさせられる内容でした。
ところで、主人公のタール・キャボットは、
地球からゴルに連れて来られて、戦士として育成されました。
イギリスのブリストル出身、オックスフォード大学卒業。
アメリカ・ニューハンプシャー州にある大学の講師。
白人で目の色は青、髪は燃えるような赤毛。
ちなみに日本人にはあまり理解できないけど、
「赤毛のアン」とかリンジー・ローハンとか見るとわかるように、
赤毛っていうのはいじめの対象にされる髪の色のようですね。
タールも学生時代、何度かそれで喧嘩しています。
タール・キャボットはイギリス人。
イギリスって現代でも階級社会だし、
オックスフォード大卒ってことは、良い家柄の出身だったわけですね。
それでもゴルの身分制度には初めは嫌悪感を持ちます。
彼はわりとお人よしで、弱いものを助けたり、しょっちゅう騙されたり、
毎回誰かに利用されて最後の最後にそれに気付いたり、
何だかんだでいろんな人とお友達になっちゃったり、
なかなか愛嬌のある人物です。
でも物語が進むにつれ、タールもゴルの社会を受け入れるようになり、
女性を奴隷として簡単に貶めるようになります。
でもこれは、タールが自分自身の弱い心を守るための行動であって、
奴隷がいることが当たり前だと思っているゴルの人たちとは、
感性が違うんですよね。
そのことにはタール自身も気付いていて、苦しむのが6巻。
それを乗り越え、タールはかなりゴル人化していきます。
騙されたり利用されたりするのは相変わらずのようですけど。
部下と富を得て行動も作成も大胆になり、
大きな野望を持ち冒険としては面白くなってきます。
でもわたしとしては、主人公としての魅力を少し失ったと感じました。
読んでいるわたしたちは地球人であって、彼が地球人としてではなく、
ゴル人として成長した姿は、読者と主人公の距離を離してしまいました。
タールとタレーナ、テリマ、そして神官王>と他者>の対立がどうなるのかは
気になりますが、洋書を取り寄せてまでは読まなくて良いかな…と思いました。
2500円くらいするし…。
でも結局7巻・8巻を買ってしまった。